【新潟・十日町】へぎそば

ご当地そば
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【特徴】

・へぎそばは、織物の盛んな新潟・十日町発祥で、地元の観光資源をうまく活用したご当地グルメです。
・つなぎに布海苔(ふのり)を使ったそばを、ヘギ(片木)とよばれる器に盛り付けて供されます。冷やしたそばは、食べやすく一口程度に丸められてヘギに盛り付けます。
・へぎそばの薬味は、十日町ではわさびが栽培できなかったため、からしが用いられます。つゆには入れず、そばに少量を塗っていただきます。
・小麦粉をつなぎにした普通のそばと比べると、つるつるとした喉越しを楽しむことができます。

・ヘギとは、絹織物の原料を調達するために必要な養蚕で使われる四角い木枠を活用したものです。
・本来は、ヘギによそったそばを「へぎそば」と呼びますが、つなぎで布海苔をつかったそば「ふのりそば」も、今では「へぎそば」と呼ばれるようになりました。
・「つなぎ」とは、そばを切れにくく、喉越しをよくするために入れられるもので、一般には、つなぎとして小麦粉を入れます。つなぎを入れる割合によって、いわゆる「二八蕎麦(そば粉80%、小麦粉20%)」、「十割蕎麦(そば粉100%)」といった表現をすることになります。
・ただ、古くは小麦粉は高価なものだったため、小麦粉に代わるつなぎとして、山芋などいろいろ工夫されてきましたが、十日町のへぎそばでは布海苔が使われるようになりました。
・布海苔とは海藻の一種ですが、刺身のツマでたまに見かける紫色のアレです。布海苔自体は波の荒い海辺の岩場なら日本全国どこでも生息していますが、良質なものはごく一部の地域だけで、1年のごく限られた時期にしか取れません。また、手作業でしか取れないため、収穫量は非常に限られた希少なものです。

・用途は食べ物だけではなく、名前の通り、古くから「のり」として用いられており、織物の糊付け(糸の表面を滑らかにして糸同士の摩擦を防ぐ、糸の強度を高めるための工程)として用いられていました。
・十日町は織物の産地だったので、他地域と異なり織物用に使う布海苔は潤沢にありました。ですので、そばのつなぎにも布海苔が使われるようになりました。また、逆にそばも織物に貢献しており、そばの副産物である茎を燃やして作るアク汁は、糸を漂白するために使われていました。このように、魚沼では織物とへぎそばは持ちつ持たれつの関係を築いたようですね。
・十日町の織物は、越後布として古くから最上級の麻織物として評価されていて、1955年には国の重要無形文化財、2007年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
・古くは奈良の正倉院に宝物として保存されていますし、江戸時代には武士の式服に使われる越後縮(原料は麻)、明治以降も振袖など着物に使われる明石縮(原料は絹)を生産し、今でも全国でも有数のきものの産地となっています。
・なぜ十日町で織物が盛んになったかというと、豪雪地帯という地の利を活かしたからです。織物には織り上がると「さらし」と呼ばれる天日干しで漂白する工程があります。雪の深い十日町では、晴天の日に雪に晒すことで、雪に紫外線が当たると発生するオゾンの作用で漂白が進み、生地は強く仕上がります。

【名店】

○小嶋屋総本店
・大正11年創業の超老舗です。へぎそばは小嶋屋総本店の初代・重太郎氏が開発したもので、ヘギにそばをよそうアイデアは重太郎氏が考案したものです。
・素材には並ならぬこだわりをもっていて、つなぎの布海苔には、下北半島など全国から選りすぐった良質なものを用いています。また、そば粉も十日市の品種「とよむすめ」を用いて、挽きたての風味を保つため、石臼で自家製粉しています。
・また、新潟を代表する食事としての地位も確立しており、6回も皇室に献上した実績もあります。
・本店は十日町に構えますが、新潟県内に8つの直営店を展開しています。

【「そば」で勝負できる実力派】

・十日町の織物の歴史を上手く商品に取り入れたご当地グルメで、地域に愛される食べ物として定着しています。
・また、そばとしてのクオリティが高いので、ご当地グルメというより、美味しい「そば」という価値を提供しているといえます。なので、年末の年越しそばなど、そばを食べたい、というシーンで他のおそばと十分勝負できる実力を持っているといえます。
・やはり、発祥のお店である小嶋屋総本店が長年こだわりを持って商品提供を続けてきたことが奏功しているといえます。小嶋屋総本店は新潟市内にも複数お店を展開していますし、新潟を代表するご当地グルメとして地位を確立しているといえます。
・プロモーションの面でもへぎそばは強みを持っており、新潟だけでなく県外において新潟の料理を出すお店だと、飲みの〆の品としてへぎそばが提供されることが多いです。飲みの〆はほぼ必ず発生する需要ですし、新潟料理のお店に来ていれば、新潟ならではのへぎそばを選択する方は多いでしょう。こうした点もへぎそばの認知率向上に貢献しています。
・まとめると、①十日町の織物の歴史という物語性を上手く活用し、②品質の高さで上位カテゴリの「そば」で十分勝負できる実力があり、③新潟料理のお店の〆として利用されることで認知度向上につなげられている、といった要因が、へぎそばの人気を支えているといえます。

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