【観光業界の風雲児】星野リゾート

星野リゾートのタイトル画像地域を盛り上げる企業
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【企業概要】

・1914年創業の軽井沢を拠点に全国でリゾートホテルを展開する老舗リゾート運営会社。
・星野一族による同族経営であるが、現社長である星野佳路氏のもと、所有と運営の分離を背景として宿泊施設運営の専門性を磨き上げ、苦境に陥った旅館・ホテルの再生を手がけることで、軽井沢の一旅館から現在の全国規模(宿泊施設54、スキー場等レジャー施設16)のリゾート運営会社まで拡大。
・星野佳路氏が経営する高級ブランドとしてブランドイメージを確立してきたが、近年はスモールラグジュアリーの「星のや」、高級温泉旅館の「界」、都市観光ホテル「OMO」、若者向け居酒屋以上旅未満の「BEB」など、成熟する日本の観光市場の中で、新たなカテゴリを生み出すブランド戦略で集客に奏功し成長。

【沿革】

・1914年、創業者である星野国次氏が、当時避暑地として成長し始めた長野・軽井沢で温泉旅館を開業。
・1988年、現社長である星野佳路氏が入社。
・1989年、父親や親族との意見対立から、佳路氏が退社。旅館で使用する備品は一族の関係者・友人から調達し割高になっていたことの是正や、同族社員と一般社員の給与体系の統一を提案したことで対立。
・1991年、星野佳路氏が一部株主の支援を取り付け、株主総会で6割の支持を確保し、父・晃良氏を解任。佳路氏が代表に就任。
・1992年、リゾート・ホテルの所有ではなく運営に特化する企業将来像を発表。多額の建設費等設備投資に伴う負債で経営を縛られることなく、運営に特化した身軽な(拡大しやすい)経営体制のコンセプトを固める。
・この頃、当初は人材が集まらず、まずは「リゾート運営の達人になる」というビジョンをアピール。ビジョンに共感して飛び込んだ若い社員をつなぎとめるため、社長自ら毎日食事・カラオケに誘うほか、ファミリービジネス特有のしがらみの強さを払拭するべく、自由に意見を言い合える組織環境の醸成につとめる。
・1995年、(株)星野リゾートに社名変更。リゾートの名前を冠することで、都会の若者を人員として確保することを企図。先述のリゾート運営の達人というコンセプトと相まって、次第に優秀な人材が集まるようになる。
・1996年、(株)ヤッホー・ブルーイング設立。クラフトビールの製造を手がける。
・2001年、山梨県リゾナーレ八ヶ岳の再生を手がける。顧客を絞り込み(小学生以下の子供がいるファミリー層)、伝えたいコンセプトを明確に訴える(親も子も楽しめるリゾート)ことが奏功。これを機に、ホテル運営能力が評価されるように。その後も2003年にアルツ磐梯の再生を行うなど、この頃から各地の温泉旅館の再生事業を展開。
・ゴールドマンサックスが日本で所有する宿泊施設の運営を星野リゾートに委託開始(山代温泉の「界 加賀」、伊東温泉の「界 伊東」、古牧温泉・青森屋など)。
・2005年、星のや軽井沢開業。星のやブランド展開開始。
・2011年、界ブランド、リゾナーレブランド展開開始。
・2013年、星野リゾート・リート投資法人を東証上場。日本初の観光特化したリート。規模拡大を図りつつ、所有と運営の分離を維持するスキームとして機能。
・2014年、初の海外運営案件として、星野リゾートKiaOra Rangiroa(タヒチ)を開始。
・また、経営ビジョンを「リゾート運営の達人になる」から「ホスピタリティ・イノベーター」に変更。外資のホテル運営大手と戦うためには、サービスにイノベーションを生み出す必要があるとの意図(そのコアが後述のマルチタスク)。
・2017年、インドネシア・バリ島に星野やバリを開業。
・2018年、OMOブランド展開開始。
・2019年、BEBブランド展開開始。
・2020年、ハワイでサーフジャック ハワイを開業。北米展開を見据えた一手。
・プライベート・エクイティファンドであるリサ・パートナーズと共同出資のホテル旅館ファンドを立ち上げ、新型コロナで苦境に落ち至った宿泊施設の再生を手がけるスキームを構築。

【事業概要】

(ブランド戦略)
・世界レベルで競争できるブランド育成を企図し、各顧客層が求めるサービスを提供するブランド戦略を展開。都市観光ホテルなど新たなカテゴリを次々に生み出している。スターバックスがカフェ業界に、家でも職場でもない居場所=サードプレイスという新たなカテゴリを生み出し、カテゴリ=スタバとなっているのと同じ。
星のや:主力ブランド。「現代を休む日」をコンセプトに、スモールラグジュアリー(小規模・高級志向の個客別に最適化されたサービスを提供)を提供。日本初の「Ryokan」ブランドとして、世界の大都市に日本旅館の展開を企図。2016年に東京・大手町にオープンした「星のや東京」は、世界展開するブランドコンセプトを体現した作りになっている。地上17階の現代建築ビルの中に、旅館の要素が組み入れられた内装仕様となっており、最上階には地下1.5kmから掘り当てた大手町温泉が楽しめる大浴場がある。旅館が進化して、機能性・快適性で外資ホテルに何ら遜色ないものとするのがテーマ。
界:「王道なのに、あたらしい」をコンセプトに、温泉観光地の高級温泉旅館を展開。同ブランドのもと、事業継続が困難な地方の温泉旅館の継承しリブランディングする。
リゾナーレ:「大人のためのファミリーリゾート」をコンセプトに、ファミリー層向のリゾートホテルを展開。自然を生かしたその土地ならではのアクティビティの提供にこだわり。
OMO:「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」をコンセプトに、従来のビジネスモデルでは届けられていなかった旅のテンションを上げる都市観光ホテルを展開。
BEB:「居酒屋以上 旅未満 仲間とルーズに過ごすホテル」をコンセプトに、若者が飲み会代わりに集まり過ごせるホテルを展開。

(マーケティング)
・CMなどのマスマーケティングに頼らず、予約もじゃらんなど大手予約サイトに頼らず、自社予約システム経由。
・背景として、星野氏自身が広告塔となり、各種テレビ等で取材されることで認知を確保できていることが挙げられる。
・また、自社予約システム経由のシェアを高めることで、旅行代理店に対する交渉力を高めることが可能になっている。
・また、ウェブマーケティングも重視しており、ウェブサイト訪問者がコンバージョンに至るよう、コンテンツの改善を常に行なっている。
・宿泊単価も高めであるが、それを許容するブランド価値(品質・満足度の高いサービス期待)を蓄積できている。

(マルチタスク・フラット組織・顧客満足度の可視化など独自性の高いホテル運営ノウハウ)
●マルチタスク
・ホテル業界は、朝と夜に仕事が集中し、昼間は手待ち時間となる、稼働率の繁閑が課題となっていた。
・そこで、現場スタッフにはマルチタスクが徹底されており、一人のスタッフが様々な業務(フロント、レストラン、客室担当、通常外部委託する清掃も含めて)をこなすことで稼働率を平準化するとともに、多様な知識とスキルを身につけることが可能とした。結果、顧客の要望に対して、スタッフが各自的確に判断・応答できる体制も構築できている。
・マルチタスクを可能にしているのが、独自の勤怠管理システムであり、スタッフの各業務のシフトを15分単位で管理することが可能になっている。
●フラットな組織文化
・社長就任当初から、ファミリービジネスのしがらみを取り払うべく、現場の社員から役員まで、役職に関わらず意見を言い合えるフラットな組織文化の醸成につとめている。
・管理職の役職は総支配人とユニットディレクターしかなく、立候補制。
・星野佳路氏が米国留学中に学んだブランチャードの組織論(競争力のリソースはモノカネではなくヒトであり、ヒトを活用するにはフラットにする必要がある(フラットでなければヒトは思考停止するから))に基づいている。
●顧客満足度調査の結果のスタッフとの共有、活用
・毎日、宿泊客を対象に顧客満足度調査を実施し、その結果をマネジメントクラスだけではなく、全スタッフが可視化できるよう整備。スタッフが顧客から直接褒めてもらえる機会になり、スタッフのモチベーション向上に寄与している。
・また、顧客の調査内容は全施設で共有され、顧客が他の施設を利用する際のサービス提供の参考に用いられる。

(運営に特化するビジネスモデルと、それを支えるリート投資法人)
・星野リゾートは運営に特化しており、各宿泊施設は他企業・投資家などオーナーにより所有されている。このため、星野リゾートはオーナーから施設運営を委託され、運営費を受領する収益モデルとなっている。これにより、星野リゾートは多額の負債を抱えることなく、機動的に事業を展開することが可能になっている。
・一方で、所有権のあるオーナー企業の意向次第で、せっかく軌道に乗せた物件の運営契約が打ち切られるリスクがあり、実際に過去顕在化していた。(アルツ磐梯、タヒチのKiaOra Rangiroaなど)この場合、折角築き上げた組織文化・マルチタスク化したスタッフという人的資源もまた失うことになる。
・このため、星野リゾート・リート投資法人を設立し、個人投資家から集めたお金でリート投資法人が星野リゾートを所有。
・また、東日本大震災で海外ファンド系投資家が一斉に手を引いてしまい、所有と運営を分離することのリスクが本格的に顕在化。
・このため、短期視点ではなく長期視点で投資する投資家を確保するべく、リート投資法人を通じた個人投資家から分散して資金確保を企図。これにより、個別オーナーの意向に左右されることなく長期目線で経営に集中する体制を構築。

(セントラルキッチンによる料理品質のスタンダード化と地元食材へのこだわりの両立)
・セントラルキッチンを有しており、スタンダードな料理については食材調達・調理を共同で行い、各施設の地域固有の料理と一緒に提供される(およそ2割)。地元の食材にこだわったメインディッシュ・デザートで顧客評価を高めている。
・セントラルキッチンを設けた背景として、後述の通り旅館再生案件においては、料理人や女将が辞めるケースが多いため。

(ホテル・旅館の再生)
・山代温泉の白銀屋や北海道のアルファリゾート・トマムなど、事業継続が困難となったホテル・旅館を引き取り、長年培ったホテル・旅館運営のノウハウや予約管理システム等インフラの共通化により再生。
・再生に際しても、トップダウンではなく現場スタッフからの意見の吸い上げから新たなコンセプトの設定を行うなど、星野リゾート流の運営ノウハウを活かしている。例えば、伊東温泉の老舗旅館いずみ荘を立て直した際は、現場スタッフからの意見吸い上げで熟年女性という既存顧客のキーマンを抽出し、「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」といったコンセプトを導いている。
・また、地元スタッフによる地域の魅力を再発見することも勝ちパターンの一つ。北海道・トマムのスキーリゾートを再生した際は、それまで顧客が集中していたスキーシーズンである冬ではなく、夏の早朝に現れる雲海を観光資源としてPRすることで、集客に成功している。

【ビジネスモデル】

・全国の温泉地域や大都市に旅館・ホテルを展開
・宿泊施設の予約は自社サイト経由が多く、旅行代理店に対する交渉力が高い(客室単価の維持が可能)
・物件は所有せず、運営のみに特化。所有は傘下のリート法人が担当(運営物件の4割)。運営に特化することで、取得資金(買収金額、設備投資額)見合いの資金調達を避けることが可能になり、機動的な運営物件の獲得ができる。
・千葉・習志野のセントラルキッチンで標準化された料理は調理・各地の宿泊施設に配送。
・事業承継・再生案件は星野リゾートが立て直しの後、リート法人に売却する流れ。この際の所有を担う資金の出し手は投資ファンド。つまり、リート法人は再生後の安定所有者の位置付け。
・足元で、新型コロナを受けた再生案件の取得手段として、投資銀行と共同ファンドを立ち上げている(リサ・パートナーズとの共同ファンド)。

【経営陣・組織文化】

(星野佳路氏の手腕)
・創業家による同族経営であるが、現社長で4代目の星野佳路氏がバブル崩壊後で業界が苦境に陥る中、当社の成長を牽引。
・星野佳路氏は、慶應義塾大学経済学部・コーネル大学ホテル経営大学院修士課程終了。卒業後2年で代表に就任しており、キャリアが経営者そのもの。
・独自性のあるビジョンと過去のブランド戦略の展開・事業再生といった実績を鑑みるに優れた経営手腕の持ち主。
・経営の意思決定においてはポーターの競争戦略論、ブランチャードの組織論など経営理論に沿った判断を重視している。
・年間60日はスキーのため冬山で過ごすほどのスキー好き。自身としても、社員に対しても人生を仕事にフルコミットするやり方は求めていない。

(フラットな組織文化)
・当初から、ファミリービジネス特有のしがらみの強さを避けるべく、フラットに意見を言い合える組織文化の醸成につとめている。

(経営陣)
・人事・財務など星野氏から徐々に移管しつつあり、マーケティングも星野氏自身を広告塔にするやり方から、組織として予算をかけて広告を検討する方法に移行しつつあった。(コロナで逆転)

(後継者)
・現在星野佳路氏は61才であり、当面は現役を張れる状況。
・ファミリービジネスで星野家が大株主であるほか、星野佳路氏自身、今後も上場の意思はないようでファミリービジネスとして継続する方針。
・息子(20才)がいるが、子供が必ずしも家を継ぐ必要はないとの佳路氏の考え。ファミリー内での事業承継計画はこれからすすめる模様。

(独自性のある経営ビジョン)
”『100年後に旅産業は世界で最も大切な平和維持産業になっている』HP代表挨拶より”
・旅には自信と異なる文化・地域の人を理解し、友人として結ぶ力「旅の魔法」があるとして、事業を通じてその役割を果たしていく、といった独自性あるビジョンを掲げる。

【業績】

・星野リゾート自体は非上場のため、東証に上場するリートの業績を確認する。
・系列のリート投資法人は順調に資産が拡大(2021/4期で資産規模(不動産取得額)1,656億円)。以下主なホテルリートと直近期業績を比較。

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※各社IR資料より作成。
※NOIは収入から費用を差し引いた純収益で、NOI利回りはNOIを取得価額で除した収益性を示す指標。この指標が高いほど収益性は高い。
※LTVはリートの有利子負債をリートの総資産で除した指標。この指標が低いほど財務の安定性は高い。
・競合他社と比べても業績も好調である。(リート法人が所有するタイミングは各物件運営が軌道に乗った後なので、適正価格で取得しているはずであるが、それでも他リートと比べて収益性は高い)・今後も順調に投資口を拡大でき、所有と運営の分離を支えると見られる。

【業界動向】

(市場動向)
・国内宿泊市場は年間20兆円超で推移。近年は、政府が2008年に観光立国を掲げて観光庁を設置し、盛り上がるインバウンド需要を背景に堅調であった。一方、2020年はコロナの影響で激減(2020年の宿泊数は、「延べ宿泊者数(全体)」が3億480万人と前年比▲48.9%)。競合他社の多くが顧客数確保のため宿泊単価を引き下げているが、星野リゾートは単価維持を優先。結果として、収益性の指標であるRevPAR(客室あたり売上高)で見ると、2021/4期はコロナ前の2019/4期の▲1.7%の33,745円となっている。(星野リゾートリートの保有分)
(リゾート法による供給過多)
・1987年施行の総合保養地域整備法(リゾート法)により従来の開発規制を緩和するとともに、開発計画に対する事業者への減税等財政措置が講じられ、ゴルフ場・リゾート・旅館への新規参入(2000施設超)が増加。日本各地に新しいリゾート施設が次々に誕生するものの、その後のバブル崩壊を受けた旅行需要の消失により、日本の宿泊市場は一気に供給過多(新規参入者の大半が赤字)になる。星野リゾートは同時期に所有ではなく運営に特化する戦略を選択し、宿泊施設の運営力を磨き上げたことで、2000年代以降の再生案件への取り組みに向けた成長基盤を構築できた。
(インバウンド需要とマイクロツーリズム)
・日本国内の観光消費は、インバウンド需要のウェイトは拡大しているものの、8割が国内観光客によるものである。今後の需要回復は、一足とびに海外旅行というより、居住地の近辺から回復すると見られる。この点、星野リゾートは居住地から1〜2時間の旅を提唱する「マイクロツーリズム」を星野佳路代表自ら掲げるなど、他社に先んじて新しいカテゴリ作りを手がけている。
(MICEによる都市部宿泊需要)
・新型コロナ前までは、大都市部において、国際会議(MICE)が新たな宿泊需要を創出していた。2018年には国内で449件(前年比+78件)と過去最高件数となり、都市部ホテルは会場・宿泊施設の提供を手がけている。
(所有と運営の分離)
・世界では、1980年頃からホテルは所有と運営の分離が一般的。所有は不動産価値の最大化、運営は運営能力の最大化、といったように目的を切り分けることで、それぞれが目的に応じて経済合理的に意思決定できる体制を構築する。これにより、ホテル経営の運営規模・生産性を引き上げることが可能となり、大手ホテル運営会社の規模は拡大。
・また、所有と運営を分離する仕組みとしてもリートが用いられており、世界最大手のマリオットは系列のリート法人(総資産約1.4兆円)を有する。
・一般に不動産会社がリート投資法人を運営する場合、スポンサーである不動産会社側がリート投資法人に物件を売却して利益を上げ、その後物件の運営にはコミットしない(エグジットして終わり)、という利益相反性が問題視されることがある。星野リゾートの場合、ビジネスモデル上、リート投資法人に売却してからも運営にコミットする仕組みとなっており、かかる利益相反性は問題視されるリスクは小さい。
(厳しい労働環境)
・祝日も勤務、不規則なシフト、身体・感情面で負荷の大きい労働環境のため、離職率は他業態と比較してダントツに高い(26.9%、他業態は9~15%程度。厚生労働省「平成30年雇用動向調査」より)。このため、①離職率を抑える取り組み(労働環境の改善)や、②省人化投資、③モチベーション維持の仕組み作り、といった取り組みが必要である。

【他社動向】

(旅館数の激減と外資のホテル参入)
・上述のリゾート法を背景に、団体旅行向けの大箱旅館が多く、旅行形態の個人化・多様化への対応遅れから経営不振に陥る先が多い。1989年に旅館数は77,629施設あったが、2017年には38,622施設まで減少。一方で、ホテルは海外ブランドの進出を背景に、1989年にホテル数は4,970施設あったが、2017年には10,402施設まで増加。
・国内のホテル・旅館の大半は運営と所有が一致しており、①規模の経済を享受することができない、②ガバナンスが効かない、といった問題から運営能力・生産性に懸念のある先が多い。
・新型コロナを受けた経営難により、老舗や大手であってもキャッシュ確保のためホテル売却・閉鎖を実施。
・外資は効率的な運営能力を背景に国内に進出増加。星野リゾートと同じく所有は行わず運営に特化するため、不動産リスクをとらずに機動的に規模拡大が可能。
(小規模な国内勢)
・国内ホテル業界は世界と比べると規模で劣る。(世界最大手のマリオットは売上高2兆円、国内最大の西武ホールディングスは売上高0.3兆円。)
・リート投資法人の規模で比較しても、先述の通りマリオットは総資産額1.4兆円に対して国内最大の星野リゾートは1/10の規模で1,600億円程度。

【SWOT分析】

●強み
・高級・高品質の宿泊サービスを提供する星野ブランドの認知率の高さ
・社員のモチベーションを高めるフラットな組織文化
・マルチタスクによる社員稼働率の向上・高い生産性・高い顧客満足度を実現する一貫性のあるサービス
・所有と運営の分離による運営能力の高さ
・リート投資法人による所有と運営の分離による運営契約打切りリスクの抑制
・国内宿泊市場で新たなカテゴリ「都市観光ホテル」などを創造
・安定した稼働率が見込める大都市ホテルも事業ポートフォリオに保有
●弱み
・星野佳路代表の後継体制に向けたソフトランディング
・フラットな組織文化・マルチタスクを支える優秀な人材確保
・所有と運営の分離による所有者からの運営契約打切りの可能性
・旅館業は繁閑が季節で大きい
●機会
・経営者の高齢化に伴う事業承継・再生の宿泊施設パイプラインの増加
・海外市場における新しい宿泊施設カテゴリ「日本旅館」の開拓余地
・新型コロナ一服後の旅行需要の回復(居住地・国内周辺から)
・MICE再開による大都市部での宿泊需要の回復
・国内市場は所有と経営の一致が大半であり、規模の経済を享受できていない
・大半の旅館は清掃・調理の繁閑の格差が大きく稼働率が低くなり、生産性が低い
●脅威
・他業態と比べて厳しい労働環境(祝日がない、感情・身体面で負荷の大きい)の中、優秀な人材の確保
・国内旅行市場を支える団塊世代の高齢化
・外資系ホテルの国内市場シェア拡大

【評価】

・星野佳路氏の後継者含めた優秀な人材確保が前提となるが、国内外で宿泊業の新しいコンセプト・カテゴリを創出できる能力と高いオペレーション能力、それを支える組織文化・所有と運営を分離するスキームを背景に、今後も成長・稼ぐ力を維持し、中長期で企業価値を拡大できる企業と考えられる。
(国内市場での成長期待)
・国内での圧倒的なブランド力を背景に、今後も経営者の高齢化により、事業再生・承継が必要になる良質な宿泊施設のパイプライン確保が見込まれる。また、都市観光ホテルという新たなカテゴリを生み出したことで、地方の温泉・リゾートに加えて大都市の宿泊需要も取り込むことが可能となり、成熟する国内市場においても当社業容は十分拡大余地がある。
・特に、今後国内旅行需要を支える団塊世代が後期高齢者に移行するにつれ、新たな需要の掘り起こし施策として、若者の宿泊需要を喚起する「BEB」ブランドを立ち上げており、このような取り組みも競合に先んじた取り組みとして評価できる。
・また、宿泊施設の運営ノウハウにおいても、マルチタスクやフラットな組織文化、小規模事業者が多い中で規模の経済の享受など、高い生産性と顧客満足度を実現する模倣が困難な仕組みを構築できている。
・規模拡大を可能にするのが所有と運営の分離の仕組みであり、所有側のオーナー企業から運営を打ち切られるリスクを抑制するため、リート投資法人による運営物件の所有という仕組みも構築できている。
(海外市場での成長ポテンシャル)
・海外の投資家は宿泊施設の新しいカテゴリを求めており、海外で展開しうるブランド「星のや」を国内勢で保有する少ない会社。
・世界市場で「星のや」という日本旅館という新しいカテゴリを開拓できれば、成長を企図できるポテンシャルはある。
(後継体制の確保)
・カリスマ性のある星野佳路氏以後の後継体制へのソフトランディング。ファミリービジネス故に、①優秀な一族経営者(所有と経営の一致)の確保、②確保できない場合は一族としての総意として優秀な経営に委託する所有と経営の分離ができないと、お家騒動になるリスクはある。
(人材の確保)
・近年の規模拡大に伴い従業員の確保も必要となるが、マルチタスク・フラットな組織文化(その分現場スタッフにも責任感・高い視座が必要になる)に対応できる優秀な人材を確保し、各施設間のサービス水準を維持できるだけの体制が追いついているかは課題となろう。

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