パナソニックが週休3日制を導入することを公表しました。休みが増えるなんてうらやましいです、、、
パナソニックのような歴史ある大企業が導入することで、今後も週休3日制を導入する企業は増えそうね。
でも、単に休みを増やすのが狙いではなく、従業員の学び直しが狙いのようよ。
そうなんですね、、、世の中そんな甘い話はないですよね。今日もいろいろ教えてください。
そもそも、なんで週休3日が検討されるようになったんでしょう。休みを1日増やすって思い切った判断だと思いますが、、、
さっきも言ったように、従業員の学び直しが狙いにあるのよ。
今までの働き手の主なキャリア形成は、新卒で就職した企業の中で出世することが中心だったわ。
結果、優秀な人材は既存の企業の中に囲い込まれるから、新しく成長させたい産業に優秀な人材が十分に集まらない、というのが日本経済の成長の足を引っ張る大きな問題として認識されるようになったの。
そこで、政府は2021年6月に決定した骨太の方針(その年の経済・財政政策の基本方針)で、選択的週休3日の導入・普及を図ることをきめたわ。「選択的」の意味は、希望する労働者が選ぶことができる、というもので、国として法律を変えて強制する類のものではない、ということよ。
政府の方針が先に決まっていたんですね。
政府としては、労働者に増えた1日の休みを活用して学び直しをしてもらって、成長分野に移動させたいのよ。
働き手としても、キャリアの意識をかなり変えないといけないですね。
要は、働き手のキャリア形成が、企業主体から働き手主体に変わるということね。
そもそも、なんで週休2日だったんでしょう。昔は学校は土曜日も授業をしていた、みたいな話も聞きますよね。これも法律で決まったことなんですか。
週休2日というのは、実は法律で定められたものではないのよ。日本の働き方を定めている労働基準法という基本法では、労働者は毎週1回の休日取得が定められているだけでよ。
そうなんですね!法律で決まっているわけじゃないんだ。
法律で定められているのは労働時間が週48時間ということだけで、慣習的に多くの企業は週6日各8時間勤務として、日曜日を休日としているのよ。
あれ、なんでそもそも日曜日が休日なんでしょう。別に月曜でも水曜でもいいですよね。
いいとこをつくわね。もっと遡ると江戸時代になるけど、この頃はお盆や年末年始とか、お祭りのための休日はあったけど、週に2日とか明確な休日はそもそもなかったのよ。
えええそうなんですね。勤勉な日本の文化はそこから生まれたんですかね。
そうかもしれないわね。その後、明治時代に入り、日本社会に欧米の仕組みが導入される中で、キリスト教の安息日(キリストが復活した日)として、日曜日は休日とする習慣が定着したのよ。
キリスト教の文化が元々の由来だったんですね。でも、そこからどうして週休2日になったんでしょう。
週休2日になった最初のきっかけは、1965年に松下幸之助が経営する松下電器産業(パナソニック)で導入したことよ。幸之助氏が米国視察に行った折、週休2日で成果を挙げている姿を目の当たりにして、米国企業との競争に勝つべく自社にも導入したみたい。
そもそも、世界で初めて週休2日を導入したのは、米国の老舗自動車メーカーのフォード社よ。
フォード社は、効率的な大量生産の仕組みで安価で質の良い自動車を製造して、米国社会に自動車を普及させた功労者よ。
でも、工場の作業は効率化のために標準化した分、工場員の作業は単調だけどノルマはきつい、といった厳しい労働環境になって、退職する人が増えちゃったの。
そこで、休みを1日増やした週休2日にして、労働環境を改善しようとしたわけね。
なるほど、週休2日は米国の働き方を参考にしたものだったんですね。
一方で、幸之助氏は単に米国のやり方をとりいれただけではなくて、単に2日休みではなく、1日休養、1日教養という形で学びを奨励していたようね。
今の学び直しの議論を先取りしているようで、まさに先見の明といったところよ。その後の松下電器は生産性の向上も寄与し、大きく成長を遂げたわ。
ただ、実際に企業が週休2日制にしたのは1980年代で、きっかけは、先ほどの労働基準法が1987年に改正され、法定労働時間が週48時間から40時間に大幅に減少したことよ。
その頃になにがあったんでしょう。
1980年頃は日本の製品が米国中心に世界市場を席巻しており、いわゆる貿易摩擦という形で日本による過度な製品輸出が批判を受けていたの。
なんで批判を受けなきゃいけないんですか。商品を売ってるだけじゃないですか。
良い質問ね。
例えば日本である製品を製造して輸出するっていうことは、その製品を製造する労働者は日本の国内で発生するわよね。
一方で、日本の製品を輸入する先のA国は、輸入するからA国で製品を作る必要がなくなるわ。
だから、その製品を作っていた労働者も必要なくなるわけ。
結局、製品を作る労働者の雇用がA国から日本に移転したといえるわ。
これって、見方を変えれば日本がA国の失業者数の増加の原因を作ったとも言えるわよね。こうなると、A国としても経済の損失になるわけだから、怒っちゃうのよ。
なるほど、いわば日本が失業を輸出することにもなるわけですね、、、
その通りよ。そうした批判の中で、日本人が働きすぎである点に批判の矛先が向いてきて、日本政府としても労働時間を下げるための施策を実施せざるをえなかった、というわけよ。
働きすぎか、、、江戸時代以来の勤勉性が裏目に出ちゃったわけですね。
こうして労働時間が下がった分、国民は余暇に高級ディナーや高級衣服など消費にいそしんだことで、その後のバブル経済につながったのかもしれないわね。
なるほど、週休2日制がある意味時代を変えたのかもしれないですね。
うした政府の施策もあって、一般に土日が休日として定着していったのよ。
ただ、あくまで法律上は週休1日しか法律では定められていないから、必ずしも土日を休日にしなければならないわけでは、もちろんないのよ。映画館や商業施設などは稼ぎ時の土日を一律休みにすると困るわよね。
あれ、学校はどうなんでしょう。気付いた時には土曜日は休みになっていたような、、、
そうね。戦後しばらくは土曜日の午前は通学、午後は休みだったのよ。
それが、1980年代に入ると、さっきの流れで親が土曜日に休むようになったんだけど、同じ家庭で親は休んでるのに子供だけ学校に行くって変よね。
そこで学校も土曜は休みにするべきだ、って話になって、1992年には全国国公立の小中高校等では毎月第二土曜日が休業日になったの。
確かにせっかく親が休みなのに、子供が学校だと、どこにも一緒にいけませんよね。
学習のカリキュラムを急に変えることはできないから、一気に土曜日を休みにすることはできなかったけど、徐々に土曜の休みは増えたわ。
1995年には月2回休みとなり、2002年には完全に週休2日になったのよ。
たしか、同時期にゆとり教育も導入されたような、、、
そうなのよ。
でも、その後の先進国が加盟する国際組織のOECDが実施した学習テスト(PISA)の結果が良くなかった(数学的応用力が1位(2000年)→6位(2003年)、読解力が8位(2000年)→14位(2003年))から、週休2日はゆとり教育と併せて学力低下の原因として、批判を浴びることになったの。
結局、今では東京都など一部の自治体では土曜日の授業を再開してるわね。
タイミングが良くなかったですね、、、
週休3日制は、実際導入が増えるんでしょうか。
実は、ユニクロを展開するファーストリテイリング(2015年)、ヤフー(2017年)がすでに導入しているわ。その後も、みずほフィナンシャルグループなど伝統的な企業も導入してるけど、あくまで育児・介護の支援や長時間労働の是正が狙いね。
従業員の学び直しが狙いとして位置づけられているのは足元の動きよ。冒頭のパナソニックは週休2日制の先駆け(1965年に導入)となった企業だし、今回もその役割を担うかもしれまないわね。
時代を超えて、パナソニックが休日を増やす先頭に立つかもしれないってことですね。
でも、なぜ今、企業側は学び直しを従業員に求めるんでしょう。
企業側としても、従業員には自立したキャリアプランを描いてもらいたい、という意向があるわね。
というのも、企業側は機動的に事業を入れ替えたいのよ。というのも、元々指摘されていた低い収益力に加えて、デジタル化や脱炭素、国内市場の縮小など事業を取り巻く外部環境が大きく変動する中で、収益力を高めるために機動的に事業の入れ替えたいのよ。
こうなると、切り売りされる事業の従業員は、所属する会社は変わるかもしれないし、業務も全く別のものに変わるかもしれない、あるいは業務自体がなくなるかもしれない。そのための心つもりをしておいてほしい、というわけね。
大手企業による事業の入れ替えは盛んに行われるようになってきてるけど、今後も厳しい競争環境を勝ち残るため、事業の入れ替えは一層増えるわ。
こうした潮流があるから、週休3日制もまた大手企業中心にきっと導入が増えていくわね。
従業員は生き抜くために一生勉強ということですね、、、
まぁ、今までも所属する会社で成功するために従業員はスキルを磨いてきたわけだから、そのスキルを磨く目的が、会社内の成功じゃなくで、会社・業界をまたいだビジネスにおける成功、に変わるというだけのことかもしれないわね。
昔と違って、ネットを通じていろんな業界の情報は幸いにも入りやすいから、個人は意識的に情報収集・現状把握を行なって、戦略的にキャリアを築いていくことが重要ね。
こうして考えると、週休3日は必ずしも労働者にとって良いことなのか、っていう疑問が湧きますね。
政府の検討する制度は、労働時間が減る分、給与も減ることを前提としているわ。
休みなんかいらないから、今の職場で給料を確保したい、という人にとってはいらない制度ね。
また、そうでなくでも、働き手が新たに手に入れる1日の休みを学び直しのために有効に活用できなければ、やはり給料が下がるだけになってしまうわ。
社会として学び直しの機会が十分にあることと、従業員側に学び直しの意欲があること、この二つが前提となる制度ということね。
学び直しの機会はたくさん巷にあふれてますけど、そもそもの学び直しの意欲は、従業員が自分で育てるしかないですね、、、
でも、そもそも学び直しって言っても何をしたらいいんでしょう。学び直し、と言われても、何をしたらいいかわからない、という人が大半じゃないですか。
政府も以下のような学び直しのための大学等の講座情報を提供するサイト「マナパス(社会人向け大学・専門学校の紹介)」を整備してるけど、こうした情報をただ収集だけしても、次のアクションになかなか結びつかないかもしれないわね。
そもそも、学び直しの迷子にならないためには、情報収集の前に、学び直しの前の段階の、そもそも自身のなりたい姿とそのための必要条件を洗い出すことが大切よ。
具体的にどうしたらいいんでしょう。
ちょっと長くなるわよ。
学び直しに向けたステップとしては、ざっくり分けて、①自分のありたい姿の理解、②今までのキャリアの特徴の把握、③ありたい姿を実現できる選択肢の洗い出し、④自身のありたい姿をふまえた強みと弱み・必要なスキルの把握、⑤選択肢の検討、になるわね。
①では、そもそも自分が一体何をすると喜び、楽しいと感じるのか、具体的なシーンを思い浮かべながらひたすら書き並べるの(注目を浴びるプレゼンが大好き、など)。その中から、自分はどんな状態であれば幸せなのか、そのためには何が必要か考えるのよ。
②では、自身のキャリアを棚卸し、思いつく特徴(営業トークはピカイチ、など)をやはり書き並べるわ。
③では、①で考えた自分の幸せな状態を実現するために、どのような働き方がありえるのか洗い出すの。ここで、はじめて情報収集してよいと思うわ。どのような職業がありえるのか、どうすれば希望する働き方に近づけるのか、また希望する働き方をしている人のキャリアストーリーなど。自分のありたい姿を認識したうえでの情報収集ですから、何が必要な情報か取捨選択できると思うわ。
④では、③で洗い出したなりたい姿の選択肢毎に、②で把握した自身のキャリアの特徴を強み・弱みに切り分けていけるの(強み・弱みは目指すキャリア次第の相対的なものだから、順番は逆にしてはだめよ)。また、その職業に就くために必須のスキルも書き出すのよ。
最後の⑤では、④をふまえたうえで、各選択肢の実現可能性を比較したうえで、どの選択肢を選ぶか決めるわ。それでも決まらない、ということもあるかもしれないけど、論理的に検討をして散々悩んだ結果であれば、最後は直感で決めてもいいと思うわ。
じゃあ早速やってみますね、、、、できた!よし、僕は納豆専門のドッグフード店を開くことにします!
どう分析したらそうなるのよ、、、