【奈良】奈良漬け

奈良漬けの記事のタイトルご当地ごはんのおとも
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たまちゃん
たまちゃん

奈良とは言いつつ、ご当地の枠を超えて全国レベルの実力を持つ奈良漬けをご紹介します。

【特徴】

・奈良の伝統食で、白瓜やきゅうり・すいかなどの野菜の塩漬けを酒粕で漬ける漬物です。
・黒色の野菜漬けが、発酵・熟成を得て鮮やかなべっ甲色に色づいた酒粕をまとっています。奈良漬の独特の色の理由は、アミノ酸と糖質が結合した「メラノイジン」と呼ばれる褐色の物質が生成されるためです。味噌・醤油も同じ理由で色づいていて、この物質は抗酸化作用、動脈硬化予防、整腸作用と良いことづくめの働きをしてくれます。
・食べ方は、周りの酒粕をキッチンペーパーでふき取り(ちょっともったいないですが、しょっぱくなり過ぎるので)、薄くスライスして頂きます。酒粕の風味とカリシャキの食感、独特の旨味を楽しむことができます。食べない分は、酒粕に包んで冷蔵庫に保存しておくと風味を維持できます。
・鰻屋さんで出てくるうな重の付け合わせとして奈良漬は江戸時代から定番です。背景としては、風味の点でもこってりした鰻と奈良漬の風味がマッチするほか、先ほどのメラノイジンが消化吸収を助けてくれる効果が実利的にあるのではないかと考えられています。

うな重と奈良漬
ハッチ
ハッチ

鰻に奈良漬けは最高のお供ですよね!

・奈良漬けの伝統的な製造法は、塩漬けした野菜を酒粕に漬けますが、一度ではなく何度も繰り返し新しい酒粕に付け替え、2年以上は続けるという手間暇がかかるものです。何度も酒粕に漬けるうちに、野菜の塩分が抜けていき、逆に酒粕独特の風味が野菜の中にしみ込んでいきます。
・漬物といえば、ぬか漬け、たくあんや白菜漬け、キムチや野沢菜漬けもありますが、これらはみな乳酸発酵。野菜にもともと付着している乳酸菌が発酵して乳酸を作り出し、酸味や香り、旨味を引き出してくれます。
・これに対して、奈良漬は酵母発酵。酒粕に含まれる酵母が発酵して味が熟成されます。また、酒粕のアルコールによる殺菌作用で長期保存が可能になるほか、野菜の塩分が酒粕に移り塩抜きをしっかりできるといった特徴があります。

乳酸発酵と酵母発酵の説明
たまちゃん
たまちゃん

酵母でも乳酸でも漬物は美味しいわ♪

・名前の通り奈良発祥ですが、奈良漬け自体の歴史は非常に古く、早くから奈良以外の地域で作られたものでも酒粕で漬けた漬物は「奈良漬け」として呼ばれるなど、奈良漬け自体が普通名称になっています。(普通名称とは、野沢菜、伊勢海老と同じで、かつては特定企業・団体の固有名詞だったものが一般的名称となったものです)

普通名称と固有名詞
ハッチ
ハッチ

確かに伊勢海老も野沢菜も地域に関係なく商品名として使われているね。

・ゆえに、海外産の野菜を用いて、仕込みの期間も半年程度、酒粕も安価なみりん粕にし、着色料・化学調味料等を用いた大量生産品も「奈良漬け」として市中に出回っています。一方で、本場の奈良で、伝統製法にこだわり本物の味を守り続ける老舗も残っていますので、古くから日本人に愛された奈良漬けの味を今でも楽しむことができます。
・良い奈良漬は通常のお漬物より若干お値段は張りますが、時代を超えて愛されるお漬物の味を楽しめると思えば、お口の中のタイムスリップ料金としてはむしろお得でしょう。

【ヒストリー】

・奈良漬けの歴史は非常に古く、奈良時代にはすでに原型である粕漬(どぶろくの底に溜まる澱に野菜を漬けたもの)が製造されていた記録(奈良時代の貴族の屋敷跡で発掘された木簡)があります。
・奈良は寺社が多く、お酒造りの中心だったため、造酒司(みきのつかさ、酒の醸造をつかさどる役所)が設置されたほどでした。(当時のお酒は豊作を祈願するため神様に捧げる神聖なものでしたので、寺社中心に生産していました。)
・当時のお酒はどぶろくの上澄み部分を呑んでいましたので、下に溜まった澱が奈良には豊富にあったと思われます。ですので、その澱に野菜を漬けて粕漬とする食文化が奈良で生まれたようです。
・平安時代の宮中料理のお品書き(延喜式内膳の部)にも記載があり、冬瓜、ナス等を漬けていたようで、当時は上流階級のみ食べられる高級料理だったようです。
・また、奈良はどぶろくから発展した清酒の発祥ともされており、992年に創建された奈良市東南に位置する「正暦寺」(今も現存します)において酒造技術が確立されたとされており、同寺の清酒製法が日本全国の社寺に伝わり、現在の酒造の原型になったともされています。

ハッチ
ハッチ

奈良は清酒の発祥地でもあるんだね!

 

 

・奈良漬けに使う粕は、当初はどぶろくの底に溜まる澱が使われていましたが、清酒の生産量が増えるにつれ、清酒の製造工程で生じる酒粕が奈良漬けに使用されるようになったと思われます。
・「奈良漬け」という言葉が最初に確認できるのは1492年に記された書物(室町時代の朝廷で会計担当官だった山科家の日記)で奈良のお土産として記されており、当時から奈良名物として人気だったことが伺えます。
・奈良漬けの名前が全国に普及したのも古く、江戸時代の始め頃に、奈良の漢方医だった糸屋宗仙が、白瓜の粕漬けを「奈良漬」として売り出し評判を呼んだようです。
・果てには、宗仙が徳川家康に奈良漬を献上するまでになり、奈良漬の味が気に入った家康は、宗仙を江戸に呼び寄せ、奈良漬の御用商人として取り立てました。日本のカルチャーの中心だった江戸で流行した結果、全国にも奈良漬けが広く普及していきました。

たまちゃん
たまちゃん

江戸時代から既に奈良漬けは全国クラスの実力者だったのね。

【名店】

○今西本店:伝統製法にこだわる超老舗
・近鉄奈良駅近くに構える江戸時代末期創業の老舗です。
・甘味料・保存料・着色料を全く使わない、昔ながらの酒粕だけを使う「純正奈良漬」を販売しています。奈良漬にこだわった商品ラインナップで、取扱い野菜は、瓜に加えてきゅうり、すいかがあります。材料に用いる野菜は奈良漬けに適した物を指定農家に栽培してもらい、酒粕も全国の蔵元から選別したものを使用する徹底ぶりです。
・最初はお酒の香りが強く味も濃いですが、数日一口サイズに切った状態で冷蔵庫で寝かせると馴染んで角がとれ、まろやかな風味になります。
・手間暇を惜しまない伝統的な生産方法のため、店舗展開は本店のみですが、通販サイトで購入することもできます。当社の奈良漬は、酒粕に付け直せば2年は保存できます。というのも、冷蔵庫のない江戸時代の製造方法を守っているからです。(美味しいのでその前に食べちゃうと思いますが、、、
・瓜は3年、すいかは5年きゅうりは6年以上つけるため、当社の奈良漬は塩分がすっかり抜け、色も非常に濃い黒です。

たまちゃん
たまちゃん

美味しすぎてお酒がいくらあっても足りないわ、、

○山崎屋:奈良漬けのポテンシャルを引き出す
・近鉄奈良駅から伸びる東向商店街に本店を構える明治初期創業の老舗で本店以外にも奈良県内で8店舗(奈良駅や近鉄百貨店など)展開しているほか、全国の高級スーパーや百貨店、お寿司や鰻屋にも商品を卸しており、手広く販路を確保しています。
・当社の奈良漬は、酒粕に加えてみりん粕を使用しており、甘口の仕上がりになっています。みりん粕はもち米と米麹を焼酎で発酵させる伝統的な製法からつくるみりんから副産物として生まれますが、現在のみりんの大半は原材料に糖分や調味料を加えて作っているため、とてもレアな食材です。
・こだわりの製法の奈良漬けに加えて、奈良漬を刻んで食べやすく小分けにして、味付けもマイルドに調整した刻み漬けも販売していて、奈良漬け独特のお酒の風味が苦手な人でも試してみやすい商品になっています。
・また、奈良漬けのアレンジ商品も豊富で、地元のお店とコラボして、奈良漬サブレ、奈良漬クリームチーズ、奈良漬アイス、奈良漬けカステラなどを展開しています。奈良漬け自体の甘塩さとお酒の風味は、焼き菓子やバニラアイス、クリームチーズなど素材自体の主張が強すぎないものと上手くマッチするようです。

ハッチ
ハッチ

ボクは奈良漬クリームチーズが大好き!

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